空間や左右の動きを生かした3つの方法
よく見るMVやPVは3Dソフトで作成されることも多いのですが、実は動画編集ソフトでもキーフレームや構図を工夫すれば、美しく印象的な作品を作ることができます。今回は、画像(静止画)を使った空間の表現方法を3つ解説します。おすすめの動画編集ソフトもご紹介しますので、参考にしてみてください。
- Part1:キーフレームを活用した3つ表現まとめ!
- Part2:キーフレームを活用して空間を表現する方法
- Part3:前後、左右の動きを表現する方法
- Part4:実写素材を合成して新たな空間を作る方法
Part1:キーフレームを活用した3つ表現まとめ!
Part2:キーフレームを活用して空間を表現する方法
素材が画像(静止画)だけでもキーフレームを活用すれば、MVのような作品を作ることができます。できるだけ詳しく説明していきますので、設定などがむずかしくてなかなか挑戦できていなかった人もチャレンジしてみてください!
ここで使う素材
人物/本棚1、2/舞い散る羽根:すべてpng形式の画像です。黒く見えている背景は透明なので、他の画像と重ねたときに違和感なく重なります。
完成イメージ
MVを意識して以下のようなイメージの動画を作成します。
●本棚を背景に人物と歌詞が上部に上がっていく。同時に羽根が舞う。
●画面下部から別の本棚が現れてシーンが切り替わり、再度人物が登場して終了。
背景を設定する
Step1.Filmoraを起動して新しいプロジェクトを開きます。
Step2.「メディア」>サンプルカラ>「ベビーピンク」を選択してタイムラインに追加します。再生時間は5秒でカットしておきます。この背景はしばらく変更しないので、ロックしておきましょう。
素材をタイムラインに追加する
素材の人物/本棚/羽根をインポートしてタイムラインに追加します。
キメ画を作成する
プレビューで大きさや位置を調整しながらキメ画を作成します。
羽根にエフェクトを追加する
立体的な空間に見せるには、以下が重要なポイントになります。
●奥から手前に向かって、小→大になるように素材を配置すること
●カメラのレンズの動きを意識して素材に動きをつけること
カメラで見た時には、手前の被写体は動きが早く、奥になるほどゆっくりした動きになります。「羽根」を一番手前に配置することでさらに奥行を出す演出をします。また、羽根にチルトシフトリニアでぼかし効果を入れることで幻想的な空間になります。
キーフレームの追加 ~開始0秒からキメ画までの動き~
Step1.再生ヘッドを1秒に合わせます。クリップをダブルクリック>アニメーション>カスタマイズを選択して「追加」ボタンを押下します。人物/本棚/羽根の3ヶ所すべてにキーフレームを追加しましょう。
Step2.次に再生ヘッドを0秒に合わせたらそれぞれのクリップをクリックして「ポジションY」を設定します。ポジションYはマイナスなので、画面下部から上がってくるイメージになります。
[設定値の目安]
- 羽根:-1500
- 人物:-800
- 本棚:-500
これ以降もキーフレームの数値は計算を元に設定していきます。まずは0秒と1秒(キメ画)のポジションYの2点を結べばおおよそのポジションYを算出することができます。
これらの数値を参考にキーフレームのポジションYを設定していきますが、数値にこだわらずプレビューで動作を確認しながら微調整していくことがポイントです。
(下図グラフ参照:部分的にゆるやかに or すばやく動かす場合は直線の角度が変化しますので注意してください)でも基本は「カメラで見た時には、手前の被写体は動きが早く、奥になるほどゆっくりした動きになる」です。グラフで見ても奥にある本棚が最もゆるやかな線になっていますね。
キーフレームの追加 ~2秒のところでヒキからヨリへトランジション
キメ画でいきなり終わるとおもしろくないので、次のカットを作成します。
Step1.再生ヘッドを2秒に移動して、以下のようにキーフレームを設定します。人物の数値を計算通りに設定すると、足が地面から大きく離れたようになって不自然なので、少な目の数値で調整しました。
[設定値の目安]
- 羽根:150
- 人物:75
- 本棚:50
Step2.新たな本棚2を一番手前に配置します。
Step3.2秒20のところで以下のキーフレームを追加します。このタイミングですべての素材が画面上部を外に抜けていくように設定します。
- 羽根:3150
- 人物:1200
- 本棚:1050
ヨリのキメ画を作成する
Step1.サンプルカラー(ベビーピンク)以外のすべてのクリップを2つ上のトラックに移動します。移動したら2秒20でカットしておきます
Step2.空きトラック2秒の位置に再度、人物と本棚1を追加します。
Step3.プレビューを確認しながら、人物と本棚を調整します。本棚が画面の中央になるように拡大するとバランスがよいかもしれません。
キーフレームの追加 ~キメ画から終了までのゆっくりした動きを作る
Step1.2秒15にキーフレームを追加します。これがヨリのキメ画の起点になります。
Step2.次に手前の2秒にキーフレームを追加します。ゆっくりと下から上がってくるためにマイナス数値を設定します。
[設定値の目安]
- 人物:-400
- 本棚:-200
Step3.5秒(再生終了時間)にキーフレームを追加します。ヨリのキメ画の起点よりもプラス数値を設定することで、ゆっくりと上方へ動くイメージになります。
歌詞を入れる
Step1.テキストを追加します。今回は「タイトル」>「プレーンテキスト」を使いました。プレビューを確認しながらタイミングや大きさを調整します。
Step2.2秒20にキーフレームを追加します。
ヨリのカットで最前面に文字を配置する
サビの締めなのであえてキーフレームは使わずに文字を表示します。先ほどのテキストと時間的に重ねるなどの調整をすると動きに違和感がなくなります。
Part3:前後、左右の動きを表現する方法
人物と街角を拡大していく。そのとき徐々に人物を画面左側に寄せていきながら、歌詞を右側に表示する。
次は逆に、人物を画面右側に寄せながら歌詞を左側に表示していく。このとき人物は反転したような効果をつける。
Step1.Filmoraで新しいプロジェクトを開いたら、素材をインポートしてタイムラインに追加します。再生時間はさきほどと同じく5秒です。
Step2.人物は中心に小さめに配置します。
1秒15にキーフレームを追加します。このときスケールと一緒にポジションYの数値も変更します。こうすることで拡大しながら中心点が移動するので違和感がなくなります。
Step3.人物と背景を拡大させた後に、すばやく左側に移動させるテクニックです。視点を動かすリズムが変わるのでワクワク感を演出する場合に活用できます。
1.人物の3フレーム目にキーフレームを追加します。
2.そのキーフレームを1秒の位置まで引っ張って移動させます。
3.同様の手順で背景にもキーフレームを追加します。
Step4.人物の動きに合わせて文字を入れるとMVっぽくなりますね。
1.お好きなテキストを選択してタイムラインに配置します。
2.タイムライン上でテキストのクリップをダブルクリックすると「高度編集」ボタンが表示されます。高度編集では、文字にアニメーションをつけて動き出すこともできます。再生ヘッドを動かしながらタイミングやサイズを調整しましょう。
3.文字のキーフレームは人物と同じ数値を設定しておきます。
Step5.人物のクリップを複製して1段上のタイムラインに配置します。「エフェクト」>ユーティリティ>ボーダーを選択して、さきほど追加したクリップにドロップします。クリップをダブルクリックして「画像」>ビデオエフェクト>ボーダーで「幅」の値を上げます。デフォルトでは太い白い線で塗りつぶされます。任意の「色」を指定しましょう。
Step6.人物が右側に移動するタイミングでさきほど追加したクリップをカットします。キーフレームを4ヶ所追加して不透明度をそれぞれ「0, 20, 80, 100」に設定します。これで徐々に塗りつぶした人物が表示されます。不透明度が「100」になったタイミングで、元の人物のクリップもカットしておきます。
Part4:実写素材を合成して新たな空間を作る方法
Step1.人物をタイムラインに追加します。
Step2.「エフェクト」>AIポートレート>セグメンテーションを選択してタイムラインの人物の上にドラッグします。人物の黒くなって背景が消えました。これで他の背景と合成できる準備が整いました。
Step3.他の背景と合成する。雑木林の素材をタイムラインに追加します。人物の背景が雑木林になりました。
*関連記事:動画アニメーションキーフレームの使い方を詳しくご紹介
キーフレーム機能
最後までお読みいただきありがとうございます。気に入ったテクニックが見つかったなら、ぜひ繰り返し使ってみてください。きっと新たな発見があると思います!